The Rolling Stones
Licks Tour 2003 in Osaka, Japan
    

 2003年3月21日  大阪ドーム



会場で買ったリックスツアーのオフィシャルプログラム。2500円でした。


 ストーンズを生で見たことがなかった。
 僕はかなり偏狭なストーンズ・ファンなので、数あるライヴ・アルバムをさんざん聴きたおしておいてから「やっぱミック・テイラーがいた頃のライヴが見たいよね」とか「エル・モカンボ・クラブでなら」などとすごく傲慢かつ不可能な事を常日頃口にしていた。
 長い間、ストーンズは日本に来られない状態が続いたし、所詮ストーンズを生で見ることなどありえないと思っていたのだ。

 だから彼らが初めて来日した90年にも、内心ではひどく興奮していたくせに「東京ドームで見たって仕方ないよ」などとさめた科白をつぶやき、経済的&物理的距離の問題(すでに故郷で就職していた)には気がつかないふりをして見に行かなかった。あのブドウは酸っぱいに決まってるんだ。

 そして2度目の来日の時は「ビル・ワイマンのいないストーンズ見たってねえ」、3度目の時は「なんかチケット売れてないみたいじゃん」…。結局いちども会場に足を運ぶことはなかった。

 しかし今回の来日が報じられたとき、僕の心境は変化していた。今度こそストーンズを見たい。

 ついに60歳を超えてしまったチャーリー・ワッツを筆頭にメンバーの高齢化が進み、大規模なワールド・ツアーはこれで最後かもしれないことがその大きな理由だった。
 
 これを見逃したらもうほんとに二度とストーンズを見ることはできないかもしれない。少し前に来日してひどく評判の良かったポール・マッカートニー公演を見逃したことが心にひっかかっていたのも確かだ。
 気がつくと僕はチケット申し込みをしていた…。

 ということで初めて見た生ストーンズだったけれど、想像していた以上に満足&興奮できるライヴだった。
 今、セットリストを見返しながらライヴの様子を思い出してゆくといくらでも文章が書けそうな気がする。でもそんなことをしたって読む人は退屈なだけだろう。だからポイントを絞って書いてゆくことにしよう。
 
 今回の「リックス・ツアー」の最大の特徴は、毎日のようにセットリストが変わることだった。これはバンドにとってもファンにとってもメリットをもたらすうまいやり方で、バンドは緊張感と新鮮味を保つことができるし、ファンにとっては自分の見たコンサートを特別なものだと感じることができる。俺の見たライヴでは○○演ったんだぜ!ってことで。
 
 確かに毎日「特別な曲」の演奏があった。3/10武道館では「ノー・エクスペクテイションズ」や「ウォリード・アバウト・ユー」、3/12横浜アリーナでは「ラヴィング・カップ」や「ホエン・ジ・ウィップ・カムズ・ダウン」、3/15東京ドームでは「ビッチ」や「リトル・レッド・ルースター」etc…。
 で、僕が見た3/21大阪ドームにおいてはそれは「ワイルド・ホース」だった。
 
 ミックの「コレハトテモロマンティックナ曲デス。」という日本語MCに続いてあのイントロが流れはじめたとき、冗談でなく時間が止まったような気がした。キースが麻薬中毒に陥った恋人アニタ・パレンバーグに向けて書いたともいわれる曲。
 
 「野生の馬も俺をひきずってゆくことはできなかった/野生の馬に、いつか俺達も乗ろう…」
 
 茫然としてただひたすら聴き入るしかなかった。これを聴けただけでも大阪までわざわざやってきた価値があったというものだ。
 
 その余韻に浸る間もなく続いて「モンキー・マン」のイントロが流れる。おおこれも聴きたかったぞ。

  ところがキースが「入り」に失敗して逆ギレし(どうもギター交換が終わらないままイントロがスタートしてしまったらしい)、ミスに構わず歌い出したミックに体当たりをくらわすという恐ろしい展開に。
 その一部始終はステージ上の巨大スクリーンにまるまる映し出されたので、その瞬間、会場が凍りついた。キースが演奏をやめてバックステージに戻ってしまうんじゃないか、と誰もがハラハラしていたに違いない。

  しかしさすがにそこはそれ、キースもそんな大人げない真似はせず、その怒りのテンションを次の「ミッドナイト・ランブラー」に注ぎ込んで、凄まじいまでのワイルドな演奏を展開した。いやほんとにすごかったす。
 
 これでキースのご機嫌も直ったらしく、ソロ・コーナーでは笑みもこぼれる。
 そしてその後も演奏はだれることなくあれよあれよという間に過ぎていき、最後はロック史に残る名曲の固め打ち。圧倒的であった。
 
 それにしても「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」とか「サティスファクション」とかもう嫌になるほど演奏してきたはずの曲を今もこれだけ新鮮に響かせる彼らの底力には感嘆する。やっぱり奥の深いバンドだわ…。
 
 しかし唯一、ミックの妙な関西弁には脱力したなあ。
 「マイド〜」とか「(スクリーンに映った会場の女の子に向かって)カワエエナア、電話番号オシエテクレヘンカ〜」とか言ってたよ。そこまでせんでも、と思うんだけど…。そのあたり彼のショーマンシップのなせるわざなんでしょうね。

【3/21大阪ドーム セットリスト】
  01. Brown Sugar
  02. Start Me Up
  03. It's Only Rock'n'Roll
  04. Don't Stop
  05. All Down The Line
  06. Wild Horses
  07. Monkey Man
  08. Midnight Rambler
  09. Tumbling Dice
  10. Slipping Away  (Keith Lead Vocal)
  11. Happy  (Keith Lead Vocal)
  12. Sympathy For The Devil
  13. Mannish Boy  (B-stage)
  14. Like A Rolling Stone  (B-stage)
  15. You Got Me Rocking  (B-stage)
  16. Gimme Shelter
  17. Honky Tonk Women
  18. Street Fighting Man
  19. (I Can't Get No) Satisfaction
  20. Jumping Jack Flash  (encore)

(2003.05.12)



これもプログラムから。カッコいい写真が多いなあ。


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