★ キッス、クイーン、チープ・トリック

 僕が中学生だったのは、70年代の後半である。世はキッス、クイーン、チープ・トリックの時代であった。

 当時は今よりもずっとはっきり洋楽のメインストリームが決まっていて、中学生の聴く洋楽といったらさっき書いた3バンドに決まっていた。ビートルズを聴いてる奴はいたが、残念ながら現役バンドではない。ザ・フーなんか聴いてるひねくれた中学生には友達ができないことになっていた。思えば良き時代であった。

 中学生の小遣いは少なかった。いろんなアルバムを聴きたいのに、毎月LPを買う金などありはしない。2,3ヶ月に1枚買えればいい方である。「ミュージックライフ」も買わなきゃならないし、学校帰りに買い食いもしなきゃならない。ちなみにレンタルレコード屋など存在しない先史時代のことである。

 で、われわれは考えた。役割分担するのだ。それぞれが担当のバンドを決め、そのレコードを買って、互いに貸しあうのである。問題は誰がどのバンドを担当するかだ。そこでバンド決めをめぐって血で血を洗う争いが繰り広げられた…てなことになると話的にはおもしろいのだが、そこまでわれわれは馬鹿ではなく、意外とあっさりと担当は決まった。

 僕はクイーン担当であった。当時のクイーンは世界一華やかなバンドだった。フレディ・マーキュリーはまだ長髪でひげもなく、ゲイであることも知られていなかった。とにかく僕は「キラー・クイーン」や「ボヘミアン・ラプソディ」の華麗なコーラスにしびれていたのである。

 こうして僕は「シアー・ハート・アタック」や「オペラ座の夜」や「華麗なるレース」を買い、友達に貸してその代わりに「地獄のロック・ファイヤー」や「ラブ・ガン」や「蒼ざめたハイウェイ」や「at 武道館」を聴いた。

 あれほどわくわくしながら音楽を聴くことは、もう二度とないだろう。今でもそれらのアルバムは好きだし、曲の隅々まで覚えている。

 朝から晩までキッスの曲を口ずさみながらギターを弾く真似をしていたM君は元気だろうか?今でもキッスを聴くことがあるだろうか?

 レコード購買分担制は高校時代も続いた。今度はキング・クリムゾン担当になったが、誰もレコードを借りてはくれなかった。(^_^;) 
 
 (2000/10/20)

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