★ 想い出のフィルムコンサート

 「フィルムコンサート」というものをご存じだろうか。

 僕と同年代の洋楽ファンなら「うんうんあれね。懐かしいね。」と肯いてくれるに違いない。
 
 ちなみに職場の同僚(僕より7つ年下)に訊ねてみたところ、「知りません。見たことも聞いたこともありません。」と言うので教えてあげた。
 
 Y君、これはね、公民館なんかにスクリーンを張って、入場料100円くらい払って、ミュージシャンのライヴフィルムやプロモーションフィルムを見るんだよ。そのころは、今みたいに家庭用ビデオが普及してなかったからね。
 
 説明しているうちに、なんだか自分がすごい年寄りのような気がしてきたが、まあフィルムコンサートというものはそういうものだったのである。
 
 記憶では、いつも通っていたレコード屋でチケットを配っていた覚えがある。中学生だった頃、ミュージシャンの映像を見る機会はほんとうに少なかったから、友達を誘ってはいそいそと出かけたものだ。

 そこで見たものについては、今となってはかなりおぼろげな記憶しかないが、確かキッスのライヴとかベイ・シティ・ローラーズのプロモフィルムとか、そんなものだったと思う。上映時間も短く、どのバンドもせいぜい数曲程度だった。あれって、たぶんレコード屋が、レコード会社経由で入手したフィルムをプロモーションのために見せていたんだろうなあ。

 そういった宣伝がらみのフィルムコンサートの他に、誰がやってたのかは知らないが、それなりのお金をとってコンサート映画を見せる催しも行われていた。そこで僕はあの「レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ」を見た。73年のマジソンスクエアガーデン公演を記録した有名なフィルムである。

 動くツェッペリンを見るのは初めてだったので大興奮したが、フィルムの調子がおかしかったのか、見ているうちに映像と音がずれはじめたのにはまいった。

 画面ではロバート・プラントがマイクに向かっているのに声は聞こえない。マイクから離れると歌が聞こえるといった具合なのである。

 しばらくしてから主催者も気づき、フィルムをいったん止めた。なにやら調整してから上映を再開。ところがしばらくすると再び同じ状況が…。結果、フィルムは何度も止められることとなり、せっかくのツェッペリンは台無しとなった。悲しい思い出である。

 TVでミュージシャンのライヴ映像を見ることも全く不可能ではなかった。NHKで「ヤングミュージックショー」という、今思うとすごいタイトルの番組が(不定期ではあったものの)放送されていたのだ。

 キッスの日本公演やウイングスのアメリカツアー、デビッド・ボウイの日本公演などが記憶に残っている。「カンボジア難民救済コンサート」では、イアン・デュリーやロックパイルといった渋めの人たち、そしてトリに出演したザ・フー(キース・ムーンはもういなかったけど)の演奏を見ることができて感激したものだ。あのフィルムってもう残ってないんだろうか?再放送してほしいんだけど…。

 そうこうするうちに、高校時代には「ベストヒットUSA」が始まり、数年後、世はMTV時代に突入していくことになる。

 そして今やVHSやLDやDVDで、ミュージシャンのライヴ映像を簡単に入手することができるようになった。一昔前には考えられなかったことだ。でもそのおかげで、どんな貴重なフィルムを見ても、あの頃のような感激は得られなくなったような気がする。仕方がないことかもしれないが、ちょっと淋しい。   

 (2001/03/27)

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