★ 忘れじのエアチェック

 前回、中高生時代のレコード購買分担制のことを書いたが、小遣いのとぼしい中高生が音楽を手に入れる方法はもうひとつあった。FM放送のエアチェックである。
 
 その頃は今に比べてFM局の数は少なかった。僕の住んでいた地方ではNHK-FMとFM愛知の2局だけ。しかし、FMというとカーステレオで聞き流すことの多い今と違い、当時は真剣な態度で聴いていた。番組表をチェックしてその時間にラジカセの前に座り、お目当ての曲がかかるとすかさず録音ボタンを押すのである。
 
 番組の選択も大事である。とにかく音楽を録音して繰り返し聴きたい人間にとって、DJのおしゃべりなど邪魔なだけなのだ。特に曲のイントロにかぶせてしゃべるなど最悪である。曲のかけかたにしても、長いからといって途中でフェイドアウトするとか1曲目のアウトロと2曲目のイントロをクロスして流すとかは言語道断であった。そういう点では、アナウンサーが淡々と曲紹介をするだけの番組が多かったNHK-FMの方が全体としてまさっていたが、FM愛知にもアルバム全曲(しかも新譜を)そのままノーカットでオンエアしてしまうという夢のような番組があった。

 そのおかげで僕は発売間もないエアロスミスの「ドロー・ザ・ライン」やジャクソン・ブラウンの「孤独なランナー」の全貌を知ることができたのである。しかし、レコード会社からクレームがついたのか、しばらくしてからその番組はなくなってしまった。

 今から思うと貴重なライヴ音源なども時々放送されていた。ポリスのデビュー直後のライヴとか、ダイアー・ストレイツとか、ボブ・マーリーの日本公演とか。ただし、その頃の自分にとってはオリジナル音源を聴くことが最優先であり、そういった音源にはそれほど執着していなかった。もったいないことである。NHK-FMで放送されたジャムの来日公演なんかもういちど聴きたいのだが…。

 そういうわけで、音楽に飢えた20年前の中高生は、FM雑誌を買い、電波の受信状態をよくするために努力し、高級なチューナーやカセットデッキに憧れ、カセットテープを買うときにノーマルにするかそれともクロームやメタルにするかで財布と相談してたのであった。このあたりに凝って、オーディオの世界に流れていったやつも多かった。この件についてはまた機会があれば書いてみたい。 しかし、あのエアチェックテープたちはどこへ行ってしまったんだろう…。
 
 (2000/11/23)

 「ロック思い出し笑い」メニューへ


 TOPに戻る

inserted by FC2 system