2007年1月13日(土) Still ill |
○ザ・スミス「ザ・スミス」(紙ジャケット仕様)(1984/2006 reissue) CDを買うスピードに聴くスピードが追いつかなくて未聴CDが山をなしている、ということはこの日記でも何度も書きました。特に最近、その山の中で大きなスペースを占めているのが紙ジャケCDです。 紙ジャケってのは、僕の場合、今まで持っていたプラケースCDを買い換える形で購入することが多いので、買った時点でジャケ自体を愛でることはしても、「今までさんざん聴いてきたアルバムだし」という理由で音自体を聴くのは後回しになりがちなのです。これではイカン、山が高くなるばかりではないかという危機感により、今年は新譜だけじゃなくて未聴紙ジャケCDも積極的に聴いていくことにしました。 ということで、まずは、去年一挙に紙ジャケ化されたザ・スミスのアルバム群からファースト・アルバムを。 シングル「Hand In Glove」で鮮烈なデビューを飾り、続けて「This Charming Man」「What Difference Does It Make?」といった印象的なシングルを発表してきたザ・スミスが満を持してリリースしたのがこのアルバムでした。 ここで重要なのは、すでにザ・スミスとしてのスタイルが完成されているということです。ファーストアルバムなので曲自体のクオリティにばらつきはあるにしても、方法論としてはもう完全にできあがっています。モリッシーが書いた、悪意と自己憐憫、コミュニケーションへの希求と諦念に満ちた歌詞※に、ジョニー・マーが自然体のメロディをつける。モリッシーはとても新人とは思えない老成した声で歌い、マーはギター・リフを空中に浮遊させる。アンディ・ルークとマイク・ジョイスはそれを地上で支える。ザ・スミスは最初から最後までとことんひとつのスタイルを貫いたグループでした。 「だれもが秘密を持っている/僕のはこれさ お見せしようか/僕たちは地獄も 満ち潮も通り抜けてきた/だから 君を頼りにしたっていいよね?/でも君は後ずさりをして 重い言葉を軽々しく投げつける/それでも僕は今も 銃弾の前にこの身を投げ出せるよ 君のためなら/だからといって それでなにか違いがあるのかい? なにか変わるのかい?/なにも変わりはしないさ/君は去ってしまった/今夜 君はひどく年老いて見えるだろう」(「What Difference Does It Make?」) 紙ジャケとしての出来はかなり高レベルです。ベースとなったのはUKオリジナルLPということで、E式ジャケ(厚紙に直接印刷をしたものを加工する方式)に、コーティングがされています。美しい。歌詞を印刷した内袋と、当時の日本盤帯も再現してあります。これで音源がリマスターされていれば百点満点だったんだけど…。 ちなみに、ジャケットはアンディ・ウォーホールの「FLESH」という映画からの引用。デザインはモリッシー本人。この方法論と引用のセンスも、バンドが終焉を迎えるまで一貫して続きます。 ※ ほとんどが「僕」と「君」のことを歌ったものですが、最終曲「Suffer Little Chirdren」だけは、実際に起きた事件を 扱っています。どういう事件だったかについては、柳下毅一郎氏によるこのテキストやこのテキストを参考に。 「ああマンチェスター、おまえには償うべきことが多すぎる」 |
2007年1月11日(木) Eternal flower |
◆チャットモンチーがMySpaceに?(ネタ元:はきだめのドブネズミと ビスケットでも分け合おうか) たしかにちょっとあやしいなー。バンド名のおかしな綴りといい、YouTube映像へのリンクといい。 ○朝日美穂「クラシックス」(2006) いちど聴いてみたいと思っていたシンガー。このアルバムは「デビュー10周年を飾る集大成のセルフカヴァーアルバム」(CD帯より)だそう。(ただし新曲も2曲あり。) ゴスペルタッチの1曲目「唇に」がダントツに素晴らしい。”コケティッシュ”とでもいえばいいのか。いやちょっと違うな。声に独特の色気のある人だけれど、聴く人に媚びるようなところは全くといっていいほどない。ただ、人によって好き嫌いは分かれるかも。未体験の方はここで試聴してみるといいと思います。 全編にわたってサウンドは非常にシンプル。ピアノ+ベース+ドラムスときどきギターという感じ。スタジオライヴ風でもある。ジム・オルークが数曲で地味にギターを弾いてました。あ、彼女のことを絶賛した過去があるのか。なるほど。 |
2007年1月9日(火) Goodbye innocence |
ザッパ「Dub Room Special」日本盤、発売中止になっちゃったらしい。まじすか。がっかり。 ○L.E.O.「ALPACAS ORGLING 」(2006) エレクトリック・ライト・オーケストラ(E.L.O)のトリビュート・バンド(CDジャーナルによれば”インスパイア・バンド”)であるL.E.Oのアルバム。ボストン出身のBleuというミュージシャン(よく知りません)を中心に、アンディ・スターマー(元ジェリーフィッシュ)やハンソン兄弟、ブラック・クロウズの中の人が参加したプロジェクトです。 ”トリビュート”より”インスパイア”と呼びたくなる由縁は、全曲がオリジナルであること。※1 つまり単純にカヴァーをやってるんじゃなくて、めくるめくポップの奔流たるE.L.Oそっくりにサウンドメイキングされた”新曲”がずらりと並んでいるのです。要するに、いにしえの「ミート・ザ・ユートピア(Deface The Music)」※2みたいなもんすね。 そうなるとこれは、「すげー似てる!そっくりそっくり。わははは」という感じでどこまで楽しめるか、というのがキモになるわけなんですが……最後まで通して聴いたら、彼らのあまりの本気さに正直ちょっと感動してしまいました。 ELOなんか知らなくったって、ポップソング好きならば素直に楽しめると思いますよ、これは。いやむしろ泣けるかも。 もうすぐ日本盤が出るらしいけど、そんなの待っていないでamazonとかでUS盤買いに走るべきです。安いし。 ※1 正確にいうと、隠しトラックにカヴァーVerがあるんですが。 ※2 トッド・ラングレンのグループ、ユートピアによるビートルズ”インスパイア”アルバム。めちゃ笑える。 |
2007年1月8日(月) Police&Thieves |
◆Chuck Berry伝説の映画がDVD化!(HMV Japan) 「ヘイル!ヘイル!ロックンロール」のこと。この映画おもしろいっすよ。なにがおもしろいって、基本的に人のことを信用しない&人に感謝しない偏屈ジジイたるチャック・ベリーと、バックバンドのバンマスであるキース・リチャーズとの絡みが。ここまで他人のために尽くすキースってのはなかなか見られません。 ○「Revolution ROCK: A CLASH JUKEBOX」(2006) ザ・クラッシュがカヴァーした曲の原曲を集めたコンピレーション。選曲・監修はポール・シムノン。 「ポリスとコソ泥」や「ブランド・ニュー・キャデラック」、「アイ・フォート・ザ・ロウ」など公式リリースされたカヴァーソングの原曲だけでなく、リハーサルやライヴのサウンドチェックでのみ演奏されたという曲もセレクトされています。 しかも全曲にポール・シムノンによる解説がついているという…。これが非常に詳細で、興味深いエピソードが満載なのです。(初アメリカン・ツアーの際、ボ・ディドリーにダメもとでサポート・アクトをオファーしたら、思いがけなくOKしてくれたので驚喜した、という話なんてかわいらしくて良い。)クラッシュファンは必読だと思います。気合い入れて英文読んでください。 「クラッシュは積極的にレゲエ・ナンバーをカヴァーし、紹介してきた」というのはよく言われることですが、このコンピを聴いていると、オールド・ロックンロールやジャズ、'60sビート・グループ&ポップス、ソウル・ミュージックにNYパンクなどなど幅広いジャンルの曲を演っていて、単純にレゲエ&スカばかりではなかったことがわかります。そのあたりも実におもしろい。セカンドアルバム用の曲として、サンダークラップ・ニューマン「サムシング・イン・ジ・エアー」を録音していたとは知らなかったよ。ミック・ジョーンズのアイデアでカヴァーしたそうですが(リード・ヴォーカルもミック)、ポール・シムノンは”ヒッピーぽいんで”気に入らなかったのだとか。 ちょっと聴いてみたいけど、「絶対に陽の目をみないだろう」とシムノン氏は書いておられるので無理かな。残念。 |
2007年1月6日(土) Join the professionals |
◆【新春】教えてgooの笑った質問(イミフwwwうはwwwwおkwwww) やっぱ最初のヤツ。凍った。笑えない。こえー。 ○ザ・プロフェッショナルズ「I DIDN'T SEE IT COMING」(1981/2001 reissue) 年末年始によく聴いていた洋モノ。セックス・ピストルズ解散後に、スティーヴ・ジョーンズとポール・クックにより結成されたグループが'81年にリリースしたアルバムである。なぜか今まで聴く機会がなかったのだが、年末にふと思いついて入手したのであった。 で、実際聴いてみると、”ジョニー・ロットン不在”の大きさを如実に感じさせるアルバムではあった。単純に、「ロットン抜きのピストルズ」を期待すると肩すかしをくらうかも。でも、末期ピストルズのシングル「Silly Thing」(プロフェッショナルズと同じくスティーヴ・ジョーンズがリード・ヴォーカル)がひそかに好きだったりする自分としては、けっこう捨て置けないのだ。確かにグダグダ&ダラダラなんだけど、そのユルさがまた妙に癖になるというか。パンクというよりパワーポップ色が強いのもいい。 今回入手したCDは2001年にリイシューされたもので、アルバム本編のほかに、ボーナス・トラックとして初期シングル曲が(B面も含めて)収録されていて、これがまた本編よりずっとエネルギッシュで良かったりする。※1 CDブックレットに掲載されているライナーノーツによれば、シングル発売後の不評、解雇したメンバーとのトラブル、スティーヴ・ジョーンズのドラッグ問題などによりアルバム発売が大幅に遅れていったらしいので、その間に本人たちのモチベーションがかなり下がってしまったのかもしれない。 それにしてもこのジャケ最高だよなー。んでタイトルは「パンチがくるの見えなかったんすよ」。※2 ちなみにリリース当時の邦題は「炸裂」。絵そのまますぎてつまんないね。 ※1 まさかと思って検索してみたら、ちゃんとYouTubeに映像があった。すげえ。その1、その2、その3。 「Just Another Dream」の巨大化したメンバーが笑える。 ※2 「I didn't see it coming」というフレーズは、アルバムリリースが(主に)外的理由で遅れに遅れたことに対する 皮肉のようにも思える。 |
2007年1月5日(金) 何をするでも話すでもなく |
昨日から仕事はじまりました。いつものことながら、あっという間の年末年始。 ○空気公団「おくりもの」(2006) 近頃は和モノばかりについて書いている気がしますが。 いや洋モノも聴いてはいるんですよ。年末にまとめて入手したザ・フーの中古ブートとか、あと「The Collectable King Crimson VOL.1」(ディスク2が名作ライヴ「USA」の”すっぴん”Ver。これは凄いです。詳しくはこちら参照)とか。でも時期を逸したりしていて、ここでとりあげづらいんすよ。 さて、それはともかく空気公団のミニアルバム6曲入りです。昨年末にリリースされたもの。 空気公団については、以前に新星堂サンプラーで聴いたことがあった程度でした。今回のはタワレコ店頭で試聴したらとても良かったので購入。 なんていうか、ヒンヤリとしつつもウォームというか、そんな音。冬の朝に降りそそぐ陽の光のよう。 山崎ゆかりという人の声はとても魅力的ですね。ちょっと大貫妙子を連想したりしました。そしてその声を支える、ひかえめながらも的確なサウンド。とりたてて新しくはないけど、けして古びない、そんな音だと思います。 ミニアルバムの長さに応じた起承転結があるのもいいです。約20分という短さながら、聴いた後の充実感は想像以上でした。興味のある方はぜひ試聴してみてください。(ちなみにYouTubeには映像も。) あ、それからタワレコで購入すると、収録曲「おはよう今日の日」のカラオケCD-Rが限定で付いてきます。 さあ、さかのぼって音源さがそうかな。 |
2007年1月3日(水) Here,there and everywhere |
新年明けましておめでとうございます。本年も「音楽中心日記」及び「音楽観察者」をどうかよろしくお願いいたします。 では今年の一発目ゆきます。 ○「Apple of his eye 〜 りんごの子守唄」(2006) いきなり去年のアルバムですみません。 鈴木惣一朗プロデュースによるビートルズカヴァー集第2弾。第1弾が女性ヴォーカリストばかりを集めたものだったのに対して、今回は男性ヴォーカリストによる歌唱ばかりを集めたもの。ジャケットも「赤盤」に対して「青盤」。 参加シンガーは、ハナレグミ、Caravan、曽我部恵一、蔡 忠浩(bonobos)、おおはた雄一、細野晴臣といった人々。 前作と同じ思想に貫かれたアコースティックで美しいアレンジのトラックが並び、聴いていてとても気持ちはいい。しかし、正直どこか物足りなく感じられてしまったのも事実だ。 たぶん第1弾にあった「凛とした空気感」に少々欠けているのだろう。あのアルバムに参加した女性シンガーたちの歌唱のコアには、良い意味での「緊張感・テンション」があった。それが、今回の男性シンガーたちにはあまり感じられないのだ。「なごみ・癒し」側に針が振れすぎているというか。だから全体を聴き通すと、やや単調な印象も残ってしまうのだと思う。けして悪いアルバムではないし、細野御大の歌唱による「グッドナイト」なんて価値あるトラックも存在しているんだけど。 まあ、もともと「子守唄」というコンセプトなんだから「なごみ・癒し」でいいだろよ、おまえが的外れなものを求めてるんだよ、って言われてしまえば、なにも返す言葉はありません。でも、ほんとうにそれだけでいいの? (参考)第1弾「Apple of her eye」を聴いたときの感想。 |
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