.アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト ◎アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト 

 1.ホエン・アイ・ゲット・トゥ・ザ・ボーダー
 2.カルヴァリー・クロス
 3.ウィザード・アンド・ダイド
 4.アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト
 5.ダウン・ホエア・ザ・ドランカーズ・ロール
 6.ウイ・シング・ハレルヤ
 7.ハズ・ヒー・ガット・ア・フレンド・フォー・ミー
 8.ザ・リトル・ベガー・ガール
 9.ジ・エンド・オブ・ザ・レインボウ
 10.ザ・グレイト・ヴァレリオ

★<アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト>  リチャード&リンダ・トンプソン

 リチャード・トンプソン。1949年生まれ。イギリスのフォーク・ロック・シーンに歴史的な足跡を残すバンド、フェアポート・コンヴェンションの創設メンバーの一人。
 バンド脱退後、72年にソロ活動に入り、数々のアルバムを発表、現在に至る。
 ギタリスト=シンガー=ソングライターとして多くのミュージシャンから尊敬を受け、その評価は年々高まるばかり。

 彼のことを簡単に紹介するとすれば、こんなところだろうか。

 この「ブライト・ライツ」は、1974年に妻リンダとのデュオで発表したアルバムで、82年の「シュート・アウト・ザ・ライツ」と並び彼の代表作とされるものである。

 ここでの彼の音楽をなんと表現すればいいのかわからないが、ひとことで言えば、「英国人にしか作りえない音楽」だろうか。アメリカのフォーク・ミュージックやブルース、カントリーの影響を受けながら、そこにイギリスのルーツ・ミュージックをブレンドした独特の音楽。

 文章だけでは感じがつかめないかもしれないが、聴けばすぐわかってもらえると思う。この音楽には、アメリカ南部のリラックスした雰囲気とは全く違うテンションがみなぎっている。そう、対比させていうならば「イギリスの冬」を思わせるような。

 時にはバグパイプやフィドルのようなフレーズを奏でる彼のギター・プレイもユニークだし、リンダの気品ある美しい声も、このアルバムを名盤にしている重要な要素だ。
 そしてもうひとつ忘れてはいけないのは、彼の書く詩の世界である。

 タイトル曲は、毎日の仕事にうんざりしている女性が、「悩み事なんて投げ捨てて今夜は華やかな明かりを見たい」と週末の歓楽街行を熱望する内容だが、明るい曲調とは裏腹な切なさが漂っている。

 また「ジ・エンド・オブ・ザ・レインボウ」は、やるせないほど厭世的な子守歌だ。

「おまえが哀れだよ、幼い嫌われ者くん/母の胸に抱かれて心配なさそうにしてるけど/おまえの間近には幸運なんて全くないんだ/だっておまえの父はヒモで、おまえを厄介者だと思っている/おまけにおまえの姉さんは娼婦も同然さ」
「ゆりかごの中では人生はとても明るく見えるだろう/でも僕がおまえの友達になって/何がおまえの身にふりかかってくるかを教えよう/虹の切れる端には何もないんだよ/もうこれ以上何も成長しないんだよ」(五十嵐正 訳)

「俺が一曲全部を費やして語る以上のことを、リチャード・トンプソンはたった一行で言い表してしまう」とジョン・クーガー・メレンキャンプは言ったそうであるが、なるほどと思う。

 いつまでも色褪せることのないこの名盤、残念なことに日本盤は手に入りにくくなってしまったようであるが、輸入盤ならば比較的容易に入手できると思うので、ぜひ聴いてみてください。

 (2001/5/10)

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