◎ 不良少年のメロディ
01. 思い出のスクールデイズ
02. 愚かなジャック
03. エデュケイション
04. 初恋の頃
05. 不良の烙印
06. 校長先生への告白
07. ハードに生きろ
08. 涙の送別会
09. 振り返ったりはしないのだ
10. フィナーレ

★<不良少年のメロディ> キンクス

 60年代に「ユー・リアリー・ガット・ミー」や「オール・デイ・アンド・オール・オブ・ザ・ナイト」などのソリッドでハードなナンバーを連発したキンクスは、いつからかシンプルなビート・グループであることをやめ、ユニークな視点でアルバムを作り上げるコンセプト・アルバム・グループへの道を突き進むこととなる。

 特に70年代に入り、RCAに移籍してからの彼らは、その手のアルバムばかりを集中的にリリースした。「マスウェル・ヒルビリーズ」「この世はすべてショービジネス」「プリザヴェイション第1幕」「第2幕」「石鹸歌劇」…。一般的人気は低いけれど、熱心なキンクス・マニアにはたまらない時代である。

 その中で僕が特に好きなのが75年にリリースされたロック・オペラ「不良少年のメロディ」だ。

 ここでレイ・デイヴィスが取り上げたテーマは「十代の学校生活」。
 1曲目で彼はこう歌う。

「学校に通っていた時代こそが 最も幸福なとき たとえその時は憂鬱だったとしても/僕たちは思い出したいことだけを思い出す/学校に通っていた頃 僕は規律やルールが大嫌いだった/教科書や制服を憎んでいた みんな僕を従わせようとするものだったから/そして 先生にはいつも逆らってばかりいた/でも 今はあの頃に戻りたい もしもそんなことができるのならば」

 この曲に導かれて語り手は過去の世界に戻る。オールディーズを巧みにとりいれたサウンドにのって、一人の少年の学校生活が語られる。クラスのいじめられっ子が奇妙なダンスのおかげでヒーローになってしまうエピソードや、「教育ってなに?」という素朴かつ哲学的な疑問、そして初恋の喜びと苦しみ。

「初恋は 君にひどい緊張感を与える/きみの頭を支配し 痛みをもたらす/そして恋が終わったとき それはとてつもない恥辱のように思えてしまう/初めての恋は 君を悲しくさせ 眠れなくさせる/君のあたまを狂わせる/大人は言う おまえはまだ若すぎるんだよ 一時的なものなんだ 初恋なんてものは」

 しかし人々の忠告にも関わらず、少年は女の子との恋に夢中になり、ついには過ちを犯してしまう。
 そのことは校長に知れることとなった。少年は赦しを求めるが、今までの少年の行状も含め怒り心頭に発した校長は少年に体罰を加える。

「どれだけ私が言ったって おまえは学ぼうとしない/ある日突然人生は向きを変え おまえの顔をひっぱたく/そしておまえは いままでよりも険しい道を進まねばならなくなる/厳しい道を受け入れなければならなくなる」 

 結局少年は退学させられることになり、クラスの皆と涙で別れを惜しんだあと、学校を去ってゆく。

 そして「No More Looking Back」。時を経て大人になった少年の独白。

「もう振り返ったりはしない/もう過去に生きたりはしない/過去はもう去ってしまった それは事実だ/今はもう過去を振り返ったりしない/強くならなければ/まっすぐに前に進まなければ/そうすることだけしか僕には残されていない/いつかきっと僕は君たちを必要としなくなるだろう/いつか君たちから自由になれるだろう」

 少年時代への決別。苦くせつないエンディング。そこがまたレイ・デイヴィスらしいのだが。

 キンクスの作品の中ではあまり語られることのないアルバムだけれど、もっと評価されてもいい秀作だと思う。

 自分の学校生活を楽しく思い出すことのできる幸福な人も、二度と学校になんか戻りたくないと思っている人も、ぜひ一度耳を傾けてみてください。
 ここにはなにか普遍的なものが埋まっているような気がするから。

 (2003/10/1)

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