◎呪われた夜 1.呪われた夜 2.トゥー・メニー・ハンズ 3.ハリウッド・ワルツ 4.魔術師の旅 5.いつわりの瞳 6.テイク・イット・トゥ・ザ・リミット 7.ビジョンズ 8.アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン 9.安らぎによせて |
★<呪われた夜> イーグルス
ウエスト・コースト・サウンドの代表格、イーグルス。
イーグルスといえば誰もが「ホテル・カリフォルニア」を思い浮かべるだろう。カリフォルニアの退廃と虚栄を、美しくドラマティックなメロディにのせて歌ったロック史に残る名曲だ。
特に「ここから出ていくことはできない」というラストの歌詞に続いて始まるギター・ソロは、この寓意的な歌詞のスピリットを余すところなく表現したものとして名高い。
そして、この曲をタイトル・トラックに持つアルバムは、他にも「ニュー・キッド・イン・タウン」「駆け足の人生」などの名曲を含み、イーグルスが72年のデビュー以来、アルバム5枚目でたどりついた頂点と言っていいだろう。
しかし、イーグルスのメンバーでありながら、「ホテル・カリフォルニア」に参加することのなかったメンバーがいた。バンジョーやマンドリン、ペダル・スティールなど多彩な楽器を操るギタリスト、バーニー・リードンである。
彼は結成当時からのメンバーであったが、バンド内の軋轢に耐えかねて、4枚目のアルバム「呪われた夜」発売後にバンドを脱退していたのである。
もともとリンダ・ロンシュタットのバック・バンドから生まれたイーグルスであるが、デビュー当時、ドン・ヘンリーやグレン・フライが無名のミュージシャンであったのに比べ、フライング・ブリトー・ブラザーズでの活動歴のあるバーニー・リードンは、ポコに在籍していたランディ・マイズナーと並び、既に世に知られた存在であった。
しかし、時がたつにつれてイーグルスは、ドン・ヘンリーとグレン・フライが主導権を握るバンドとなっていく。そして3枚目のアルバム「オン・ザ・ボーダー」から、バーニー・リードンとは長年の友人であったギタリスト、ドン・フェルダーが参加。皮肉なことに、これがバーニーにとっては脱退の遠因となってしまったのである。ドン・フェルダーはこれまでリード・ギタリストの座にあったバーニーをライバル視し、彼との確執に耐えきれなくなったバーニーは、バンドを脱退することとなったのだ。
ドン・フェルダーはハードでソリッドなギターを弾くのを得意とし、イーグルスにハード・ロック的要素を持ち込んだ人物である。それに対しバーニー・リードンは、カントリー的なフレーズが得意なギタリスト。バンド自身の音楽が、初期のカントリー・ロック的スタイルからもっと都会的なスタイルに移行していく流れの中で、彼の居場所はなくなっていったのかもしれない。
そしていまや、イーグルスのギタリストとしてドン・フェルダーやジョー・ウォルシュの名を挙げる人はいても、バーニー・リードンのことを思い出す人はわずかだ。僕にはとてもそれが悲しく、せつなく思える。彼もまたイーグルスというバンドに欠くことのできないメンバーであったのに。そう、ストーンズにおけるブライアン・ジョーンズのように。
バーニーが参加した最後のアルバム「呪われた夜」を、もう一度彼のプレイに注目しながら聴いてみてほしい。ドン・ヘンリー、グレン・フライと共作した「ハリウッド・ワルツ」での控えめながらも効果的なスティール・ギター&マンドリン、神秘的なインストナンバー「魔術師の旅」でのバンジョー・プレイ、「いつわりの瞳」での透明で柔らかなリード・ギターのフレーズ、そしてラストを飾る自作のバラードナンバー「安らぎによせて」での穏やかで優しい歌声に耳を傾けてほしい。イーグルスの中で彼の果たした役割が決して小さなものでなかったことがわかってもらえるだろう。
今、彼はミュージシャンを引退してしまい、A&Rスタッフとして音楽業界と関わっているという。いったいどんな気持ちでイーグルス時代のことを思い出すのだろうか。
(2001/7/5 )
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